次の案件を受けるかを決める数字は、一つにして一か所に置く
次の案件を受けるかどうかは、売上ではなく、いまの顧客に約束した対応に残っている余力で決めます。
この記事の要点
- 見る数字は売上ではなく、約束した対応に残っている余力
- 余力は、確定済みの作業を引いた残りの時間で数える
- 置き場所は一か所にし、見積もりを出す手前に置く
- 数字が足りない月は、断るか、納期を動かすかを先に決めておく

目次
見る数字は売上ではなく、残っている余力にする

A&Aの考え方
ここで言う数字とは、次の案件を受けるかどうかを決める前に、一度だけ見る数字のことです。
A&Aの考え方
この記事を書いている Automate & Augment (A&A) は、手順の決まった仕事を AI に任せ、判断を人に残す仕組みを設計し、開発しています。
A&Aの考え方
その立場から、見る数字は売上ではなく、いまの顧客に約束した対応に残っている余力にするのがよいと考えます。
A&Aの考え方
売上を見ると、受けるほど数字がよくなります。断る理由はどこにも出てきません。余力を見ると、受けた瞬間に数字が減ります。減り方がその場で見えるので、断る理由も同じ場所に出ます。
出典に基づく事実
製品を作る会社が顧客に手厚く接しているだけなら、相手は手厚さに感謝します。ところが、その手厚さそのものに料金が付き、時間単位で払われ始めると話が変わります。相手は何でもやってくれると期待するようになる、とグレアムは述べています。
A&Aの考え方
A&A はこの話を受託の側から読み直します。時間で払われる仕事では、相手の期待に上限がありません。だから、売った時間の合計を見ても、あとどれだけ引き受けられるかは出てきません。出てくるのは、約束した分を果たしたあとに残る時間のほうです。
A&Aの考え方
余力にはもう一つ、よいところがあります。売上は受けた後にしか動きませんが、余力は受ける前から動きます。受けるかどうかを決めるときに使えるのは、決める前に動く数字だけです。
仮想例
たとえば、今月あと40時間動けるとします。既存の3件で確定している作業が30時間なら、残りは10時間です。ここに、見積もりで20時間かかる相談が来たとします。売上を見ても、分かるのは「受ければ増える」ということだけです。余力を見れば、「10時間足りない」と分かります。
余力は残りの時間で数える

A&Aの考え方
数え方は引き算一つで足ります。今月まだ動ける時間から、既存の案件で確定している作業の時間を引きます。残った時間が、次の案件に出せる余力です。
A&Aの考え方
引く側の時間には、納品の作業だけでなく、既存の顧客への返信や打ち合わせも入れます。返信と打ち合わせを入れずに数えると、余力は実際より大きく出ます。余力を大きく見せると、受けすぎても言い訳が立ってしまいます。
A&Aの考え方
確定している作業は、見積書か作業記録のどちらか一方から取ります。両方を足すと、同じ作業を二重に数えます。見積書からは約束した量が出て、作業記録からは実際にかかった量が出ます。どちらを使うかを先に決め、以後は変えません。
仮想例
たとえば、今月動ける時間を40時間と置きます。既存の2件で確定している作業が25時間、問い合わせへの返信と打ち合わせに5時間かかるとします。残りは10時間で、これが次の案件に出せる余力です。
A&Aの考え方
数える単位は、案件の長さに合わせます。一件が数週間で終わる仕事なら週ごとに、数か月かかる仕事が中心なら月ごとに数えます。
A&Aの考え方
時間ではなく件数で数える手もあります。同時に持てる案件の上限を決め、いまいくつ持っているかを数えるやり方です。件数なら数えやすい代わりに、大きさの違う案件を同じ一件として扱うことになります。案件の大きさがそろっている会社なら、件数のほうが続けやすい数え方です。
A&Aの考え方
余力がマイナスになる月も、数字はそのまま残します。ゼロで止めると、どれだけ超えているかが分からなくなります。
仮想例
たとえば、余力の欄にマイナス15時間と書いてあるとします。この数字からは、断るという答えのほかに、どの納期を動かせば足りるかまで読めます。
| 観点 | 売上を見る | 余力を見る |
|---|---|---|
| 数字が動く時 | 受けた後 | 受ける前 |
| 受けたとき | 増える | 減る |
| 断る理由 | 出てこない | その場に出る |
| 数える対象 | 売った金額 | 約束に残る時間 |
置き場所は一か所にし、見積もりを出す手前に置く

A&Aの考え方
数字が散っているのは、受託の会社だけではありません。業種が違っても、同じように散らばっていた数字を一か所にまとめた例があります。
出典に基づく事実
Anthropic は2026年9月15日に、小さな事業者向けの新しいワークフローと連携先を発表する記事を出しました。その中に、使っている会社の例として Mothership Coffee Roasters の話があります。ラスベガスで六店舗のカフェを持ち、卸と仕出しもしている会社です。
出典に基づく事実
創業者の Juanny Romero さんの会社では、数字がレジ、会計ソフト、社内チャット、メールの四か所に分かれていました。週に一度まとめて見る場所は、どこにもありませんでした。
出典に基づく事実
Romero さんは四か所の数字を Claude につなぎ、予測と週ごとの計画を Claude の上で立てるようにしました。いまは六店舗の運営を、一つにまとめた場所から回しています。
A&Aの考え方
この話は飲食と小売のもので、受託の会社とは原価のしくみも忙しくなり方も違います。出典は Anthropic 自身の発表記事で、22%という数字も会社自身の報告です。
A&Aの考え方
A&A がこの話から取るのは、利益率ではありません。利益率より手前のところです。数字が四か所に分かれていて、週に一度まとめて見る場所がない、という状態です。受託の会社にそのまま当てはまるのも、この状態だけです。
A&Aの考え方
置き場所は、すでに毎日開いているものの中から選びます。作業記録でも、表計算でも、手元のメモでもかまいません。新しい道具を増やすと、見に行く手間が増えます。その手間が、見ない理由になります。
A&Aの考え方
置く位置は、見積もりを出す手前です。相談を受けた時点ではまだ早く、見積書を送ったあとでは遅すぎます。金額と納期を書く直前に数字が目に入れば、その場で判断が変わります。
A&Aの考え方
更新は週に一度で足ります。毎日直すと手が止まり、月に一度だと判断の前に古くなります。作業記録から自動で集める形にすれば、毎週の手入力は要りません。更新した日を数字の隣に書いておけば、古い数字をそのまま読まずに済みます。
足りない月の答えを先に決めておく

A&Aの考え方
数字を置いても、足りないと出たときの答えを決めていなければ、結局は受けてしまいます。見るだけでは手が止まりません。だから、足りない月にどうするかを、数字と同じ場所に一行で書いておきます。
A&Aの考え方
答えは二つです。断るか、納期を後ろへ動かすかです。どちらも相手に送る文が要るので、先に書いておけば、相談が来た日に考えずに済みます。
仮想例
たとえば、断る一行はこう書けます。「今月は既存の案件で手が埋まっているため、お受けできません。来月の第2週からなら着手できます」。納期を動かすときは、「着手は来月の第2週、納品はその4週間後」のように、日付だけを先に出します。
A&Aの考え方
断る判断は、相手を失う判断ではありません。いまいる顧客への対応を守る判断です。受けたあとに遅れが出たとき、失うのは新しい相手ではなく、すでに払っている相手の信用のほうです。
A&Aの考え方
例外を認める条件も、同じ一行の中に書きます。たとえば、既存の顧客からの追加だけは余力を超えても受ける、と決めておきます。例外は一つまでにします。例外が増えるほど、数字そのものを見なくなります。
A&Aの考え方
余力を増やす手として外注を考えることもできますが、増えるのは作業の時間だけです。外注に出した分も、こちらで確認する時間は残ります。余力を数えるときは、外注に出す予定の作業でも、確認にかかる時間は自分の側に置いて数えます。
A&Aの考え方
月が終わったら、見積もりの時点の余力と、実際にかかった時間を並べて見ます。ずれが毎月同じ向きに出るなら、動ける時間の見積もりが甘いということです。数字そのものより、ずれの向きのほうが直す手がかりになります。
まとめ
A&Aの考え方
次の案件を受けるかどうかは、案件の良し悪しではなく、受ける前に見る数字で決まります。
A&Aの考え方
見る数字は売上ではなく、いまの顧客に約束した対応に残っている余力です。
A&Aの考え方
余力は、今月動ける時間から確定済みの作業を引いた残りで数えます。
A&Aの考え方
置き場所は一か所にし、見積もりを出す手前に置きます。足りない月の答えは、断るか納期を動かすかを、先に一行で書いておきます。
A&Aの考え方
このやり方が要らない場面もあります。同時に持つ案件がいつも一件なら、余力は見るまでもなく分かります。
次の案件を受けるかどうかは、案件の良し悪しではなく、受ける前に見る数字で決まります。見る数字は売上ではなく、いまの顧客に約束した対応に残っている余力です。売上は受けた後にしか動きませんが、余力は受ける前から動くからです。余力は、今月動ける時間から確定済みの作業と既存顧客への対応を引いた残りで数え、置き場所は一か所にし、見積もりを出す手前に置きます。足りない月の答えは、断るか納期を動かすかを、先に一行で書いておきます。このやり方が要らない場面もあります。同時に持つ案件がいつも一件なら、余力は見るまでもなく分かります。
よくある質問
余力が足りないのに、どうしても受けたい案件が来たらどうしますか。
受ける判断はできます。そのときは、どの既存案件の納期を動かすかを同時に決めます。余力を超えて受けるとは、どこかの約束を遅らせるという意味です。遅らせる先を決めずに受けると、遅れる相手は後から勝手に決まります。
数字を一つに絞ると、判断が雑になりませんか。
雑にはなります。一つに絞るのは正確さのためではなく、受ける前に見られるようにするためです。四か所に分かれた正確な数字は、判断の前には見られません。精度を上げたいときは、数字を増やさずに、余力の数え方そのものを直します。
この数字の更新を、AI に任せられますか。
更新は任せられます。任せられないのは、どの記録を使うかを決めることと、足りない月にどうするかを決めることです。この二つを決めずに更新だけ自動にすると、合っているかどうか分からない数字が毎週届きます。
出典・編集情報
記事の調査で確認した一次資料です。資料の公開・更新時期と、調査時の確認日を分けて記載しています。
- Claude for Small Business launches new workflows, integrations, and training programs
Anthropic · September 15, 2026
確認日 2026-10-21 - Do Things that Don't Scale
Paul Graham · July 2013
確認日 2026-10-21