メインコンテンツへスキップ
メニュー

AIで作った仕組みが売れない:買い手の予算の枠を一つ選ぶ

新しい区分の名前を世の中に覚えてもらう前に、買い手が今年すでに予算を持つ枠を一つ選びます。

この記事の要点

  • 止まる原因は説明不足ではなく、買い手に予算の枠が無いこと
  • 乗せる枠は、申請する担当者に去年の支出を聞いて決める
  • 枠を決めると、比べられる相手と価格の基準も決まる
  • 新しい区分の名前を広める道は、乗れる枠が一つも無いときだけ

全体像図を準備中

目次

説明不足ではなく、予算の枠が無いから止まる

A&Aの考え方

予算の枠とは、買い手の会社が支出をあらかじめ割り当てている区分のことです。会計では費目と呼びます。情報システムの保守、営業の外注費、研修費のように、去年から続いている枠が、どの会社にもあります。

A&Aの考え方

自分の会社のために作ったAIの仕組みが、他社にも売れると分かることがあります。見せると反応はよく、相手も必要だと言います。それでも社内に持ち帰ってもらうと、そこから話が返ってきません。

A&Aの考え方

返ってこない理由は、納得していないからではありません。社内で予算の使い道を申し込む手続きを、申請と言います。その申請に使える枠が、相手の社内に無いからです。担当者は承認をもらうとき、既存の枠を一つ選んで金額を書き入れます。選べる枠が無いと、そこで手が止まります。

A&Aの考え方

ここで多くの人が足すのは、説明です。資料を厚くし、事例を増やします。足りないのは説明だと思うからです。

A&Aの考え方

この記事を書いているAutomate & Augment(A&A)は、仕事の進め方をAI前提に作り替えることを請けている会社です。

A&Aの考え方

A&Aはこれを、理解の問題ではなく決裁の問題だと考えます。説明を増やしても、相手の社内に枠は増えません。同じ場所でつまずいた記録が、海外の公開資料にあります。

出典に基づく事実

営業の下調べを自動化する道具を提供するClayが、導入事例を公開しています。取り上げられているのは、話し言葉の指示からwebアプリを作るサービスLovableです。

Clay ↗

出典に基づく事実

その事例は、解くべき問題の一つをこう書いています。「The "vibe coding" category didn't exist before」。

Clay ↗

出典に基づく事実

話し言葉でアプリを作るvibe codingという区分は、それまで無かった、という書き方です。同じ箇所は、こう続きます。

Clay ↗

出典に基づく事実

「There was limited established market understanding of what an AI app builder could do or who it was for」。

Clay ↗

出典に基づく事実

AIがアプリを作るサービスに何ができて誰のためのものか。市場の側の理解は限られていた、という意味です。

Clay ↗

A&Aの考え方

ここで問題なのは、製品の能力の説明ではありません。市場の側の理解です。小さな会社が売るとき、この理解の不足は、相手の社内に枠が無いという形で現れます。これはA&Aの読みです。相手は言葉としては分かっていて、足りないのは金額を書き入れる枠だけです。

乗せる枠は、担当者に去年の支出を聞いて決める

A&Aの考え方

乗せる枠は、こちらの提案書では決まりません。相手の社内にどの枠があるかで決まります。

A&Aの考え方

A&Aの選び方は一つです。買い手の社内で今年すでに予算が付いている枠を見て、この仕事の成果が最初に効くものを一つ選びます。来年から新設される枠や、頼めば作ってもらえそうな枠は数えません。

A&Aの考え方

枠の候補は、提案を出す前に相手から聞きます。聞く相手は決裁者ではなく、申請する担当者のほうです。去年どの枠から何を買ったかを覚えているのは、担当者だからです。

出典に基づく事実

一社ずつ相手に合わせるやり方については、ある起業家が2013年に自分のwebサイトで公開した文章に記述があります。初期の創業者に向けて、数を増やせない手作業をやるよう勧めた文章です。

Paul Graham ↗

出典に基づく事実

その文章は、初期にやるべき手作業をこう書いています。

Paul Graham ↗

出典に基づく事実

「The most common unscalable thing founders have to do at the start is to recruit users manually」。

Paul Graham ↗

出典に基づく事実

創業者が最初にやる、数を増やせない仕事の代表は、利用者を手で集めることだ、という意味です。会社どうしの取引については、同じ文章にさらに踏み込んだ記述があります。

Paul Graham ↗

出典に基づく事実

「pick a single user and act as if they were consultants building something just for that one user」。

Paul Graham ↗

出典に基づく事実

一社だけを選び、その会社のためだけに作る相談役のように振る舞う、という書き方です。同じ箇所は「The initial user serves as the form for your mold」と続きます。

Paul Graham ↗

A&Aの考え方

最初の利用者が、型を取るための原型になる、という意味です。A&Aはこの道筋を、枠を見つける方法として読みます。一社に合わせて作る過程で、相手がどの枠から出したかが分かるからです。この文章は予算や決裁については何も述べておらず、この読み替えはA&Aのものです。

仮想例

ここからは仮の例です。社内の問い合わせ対応をAIに寄せる仕組みを売るとします。枠の候補は、情報システムの保守、営業の外注費、研修費の三つです。

仮想例

今年の予算が付いているのが保守だけなら、乗せる枠はそこに決まります。これは架空の例で、実際の案件の記録ではありません。

仮の例。乗せる枠を選ぶと、同じ行の二つも一緒に決まる。今年の予算が付いているかは、買い手ごとに埋める。
乗せる枠の候補比べられる相手その枠での価格の基準
情報システムの保守今その保守を請けている会社既存の保守費
営業の外注費代理店代理店の月額
研修費研修会社一回あたりの単価

枠を決めると、比べられる相手と価格の基準も決まる

A&Aの考え方

枠を選ぶことには、こちら側の負担もあります。その枠には先客がいるからです。

A&Aの考え方

情報システムの保守に乗せれば、比べられるのは、今その保守を請けている会社の保守費です。営業の外注費に乗せれば、代理店の月額と並びます。研修費に乗せれば、研修会社の一回あたりの単価が基準になります。

A&Aの考え方

つまり枠を選ぶことは、比べられる相手と価格の基準を自分で選ぶことです。これは出典のどちらも述べていない、A&Aの読みです。

A&Aの考え方

安く買い叩かれないように新しい名前を作るべきだ、という反対意見があります。これには答えが要ります。

A&Aの考え方

A&Aの答えはこうです。名前を作る道でも、比べられること自体は起きます。起きる時期が後ろにずれるだけで、その間は市場に教える費用を自分で払います。

A&Aの考え方

枠に寄せる道では、比べられる相手と価格の基準が先に見えます。見えているものは、提案に織り込めます。

A&Aの考え方

織り込む形は、枠ごとに変わります。保守費に乗せるなら、今の保守の範囲に入っていない所を、提案書の項目として書き出します。外注費に乗せるなら、置き換える作業の量を項目にします。

A&Aの考え方

どちらも、相手が先に持っている基準の上に、自分の項目を足す形です。ここまでの材料は、一枚に書き出すと整理できます。

A&Aの考え方

枠の候補を三つ並べて、それぞれの行に次の三点を書きます。今年すでに予算が付いているか。比べられる相手は誰か。その枠での価格の基準は何か。

A&Aの考え方

A&Aは、どの枠から出したかで受注率や単価、決裁までの日数が変わるかどうかを測っていません。枠の有利不利の順位も示しません。

A&Aの考え方

言えるのはここまでです。枠を選ぶと、比べられる相手と価格の基準も一緒に決まります。

乗れる枠が一つも無いときだけ、名前を作る道を選ぶ

A&Aの考え方

枠が一つも見つからないときに、もう一つの道が残ります。新しい名前を作って、市場の側にその区分を覚えてもらう道です。

出典に基づく事実

Lovableの事例は、その道を選んでいます。そのために組んだのは、製品を実際に動かして見せる発信者です。同じページは、その理由をこう書いています。

Clay ↗

出典に基づく事実

「the highest-ROI channel for product education and demand generation」。

Clay ↗

出典に基づく事実

製品の使い方を知ってもらうことと、ほしいと思ってもらうことに、かけた費用が最も効く経路だ、という書き方です。市場に教えること自体が、目的として書かれています。

Clay ↗

出典に基づく事実

同じページは、その経路の負荷も書いています。「the universe of relevant creators is large, the quality varies enormously」。

Clay ↗

出典に基づく事実

該当する発信者は数が多く、質のばらつきも大きい、という意味です。教える経路は、ただで手に入るものではありません。

Clay ↗

出典に基づく事実

その道を選んだ側の規模も、同じページに書かれています。「Over 40 million projects have been built on the platform since launch」。

Clay ↗

出典に基づく事実

公開以来、そのサービス上で4,000万件を超えるプロジェクトが作られた、とされています。

Clay ↗

A&Aの考え方

A&Aはここをこう読みます。市場に教える道は、教える費用を自分で払える規模の事業に開かれています。出典は規模と経路の負荷を書いているだけで、どの規模なら選べないとは述べていません。これはA&Aの読みです。

A&Aの考え方

真似できない理由は、規模だけではありません。発信者という経路が効くのは、見た人がその場で自分で試せる製品だからです。人が張り付いて納める売り方に、同じ経路はありません。これもA&Aの判断です。

A&Aの考え方

同じページには、成果として「+50% more qualified meetings per rep」という数字も載っています。営業担当者一人あたりの、見込みのある商談の数が50%増えた、という書き方です。母数も期間も定義も書かれていないので、A&Aはこの数字を自社の見込みには使いません。

A&Aの考え方

だから小さな会社では、名前を作る道を既定の選択肢にしません。候補の枠を三つ書き出して、そのどれにも乗らないと分かったときだけ残る例外として置きます。

まとめ

A&Aの考え方

止まる原因は、説明が足りないことではなく、買い手に予算の枠が無いことです。

A&Aの考え方

乗せる枠は、申請する担当者に去年の支出を聞いて決めます。

A&Aの考え方

枠を決めた時点で、比べられる相手も価格の基準も見えてきます。

A&Aの考え方

名前を作る道が残るのは、乗れる枠が一つも無いときです。

A&Aの考え方

枠を一つ決めてから出す提案は、相手の社内でそのまま申請の形に移せます。説明を厚くする前に決めることは、この一つです。

商談が止まるのは説明が足りないからではなく、買い手の社内に申請で使える予算の枠が無いからです。乗せる枠は、申請する担当者に去年の支出を聞いて決めます。枠を決めると、比べられる相手と価格の基準も一緒に決まり、その二つを提案に織り込めます。新しい名前を作る道が残るのは、乗れる枠が一つも無いときです。

よくある質問

枠を一つに決めたあとで、別の枠のほうが通りやすいと分かったらどうしますか。

乗せ替えます。枠は提案の属性であって、提供物そのものではありません。乗せ替えると比べられる相手と価格の基準も入れ替わるので、提案の項目もその枠に合わせて書き直します。決めることの意味は、一つに絞って出すところにあります。

相手が一人社長で、申請する担当者がいない場合はどうなりますか。

聞く相手が社長本人になるだけで、やることは変わりません。今年すでに予算が付いている枠はどれか、その枠は去年なにに使ったかを聞きます。一人社長でも、去年の支出の区分は手元にあります。

新しい名前を作る道は、小さな会社ではまったく選べないのですか。

乗れる枠が一つも無いと分かったときには残ります。この記事が勧めないのは、確かめる前に既定の選択肢として選ぶことです。出典が示しているのは、その道を選んだ側の規模と、発信者の経路の負荷までで、どの規模なら選べないとは述べていません。

出典・編集情報

記事の調査で確認した一次資料です。資料の公開・更新時期と、調査時の確認日を分けて記載しています。

  1. How Lovable uses Clay to scale one of the fastest-growing startups in history

    Clay · undated customer story page; no publication or update date shown

    確認日 2026-10-25
  2. Do Things that Don't Scale

    Paul Graham · July 2013

    確認日 2026-10-25

編集方針

← 記事一覧へ