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AIサービスの商談が止まったら:使う人と支払を決める人を分ける

商談が止まったら、追加のデモより先に、使う人・支払を決める人・導入を確認する人ごとに、聞けたことと未確認を分けます。

この記事の要点

  • 現場の担当者の満足と、支払・導入の判断を分ける
  • AIの企業調査で分かる役職は未確認の欄に置く
  • 次の面談の前に、未確認の欄を質問に直す
  • 共同面談・判断材料の作成・確認待ちから次の一手を選ぶ
商談が止まったら、追加のデモより先に、使う人・支払を決める人・導入を確認する人ごとに、聞けたことと未確認を分けます。
この記事の要点を図にしたものです。
目次

担当者の満足と、支払・導入の判断を分ける

A&Aの考え方

取引先の担当者が試して気に入ったことと、支払や導入が決まったことは、商談ごとに作る表の、別々の行に書きます。ここでいう3つの役とは、実際に使う人、支払を決める人、導入を確認する人のことです。表の形は、後の節で例と一緒に見せます。

A&Aの考え方

想定するのは、自社の業種のサービスを法人に売っていて、その仕事の中にAIを組み込んだ会社です。取引先の担当者が試用を気に入り、もう一度デモを見たい、資料をもう少し欲しい、と頼んできます。それでも、発注の話は出てきません。

A&Aの考え方

使う人は、日々の業務でサービスの成果物を受け取り、出来に注文を付けられる人です。支払を決める人は、金額に判を押すか、押す人へ話を上げるかを決める人です。導入を確認する人は、情報の扱いや社内の決まりに合うかを見る人です。

出典に基づく事実

起業支援の組織 Y Combinator (YC) は、2018年10月に、YCのパートナーが起業家の質問に答えた記事を出しました。営業を始める会社への勧めの1つめは、製品の実際の買い手を突き止めることです。記事の説明では、買い手とは、カードを出すか請求書に署名するかして、購入を決める人のことです。

Y Combinator ↗

出典に基づく事実

同じ記事は、最初の顧客には、購買の部署がまだ無い会社を選ぶよう勧めています。製品を気に入って使う人が、自分で支払を決められる会社です。

Y Combinator ↗

A&Aの考え方

この記事を書いている Automate & Augment (A&A) は、この助言を、使う人と決める人が別のことがある、という見方に立ったものと読みます。法人に売るサービスでは、成果物を喜ぶ人と、費用に判を押す人が別であることがよくあります。担当者の「いいですね」は、支払や導入の条件を何も確かめていません。

A&Aの考え方

それでも手応えは残るので、社長は空いた時間を追加のデモや資料に使いがちです。作業は進んでも、商談の進み具合は1週間前と同じです。担当者が満足していることと、支払を決める権限があることを別の欄に書いておけば、この2つを取り違えずに済みます。

A&Aの考え方

使う人と支払を決める人が同じで、金額もその人の裁量で決められる範囲なら、行を分ける必要はありません。YCが最初の顧客として勧めているのは、この条件に当てはまる会社です。

AIの企業調査で分かる役職は未確認の欄に置く

A&Aの考え方

AIに取引先を下調べさせると役職や業種は分かりますが、その人が支払を決められるかは分からないので、未確認の欄に置きます。

出典に基づく事実

Clay は、企業の下調べを自動で行うツールです。Clay は自社のサイトで、Lovable の事例を紹介しています。Lovable は、普通の言葉で頼むとアプリを作ってくれるAIサービスです。Lovable の法人向けの問い合わせフォームに入力が届くと、Clay がその会社をすぐに調べます。

Clay ↗

出典に基づく事実

調べるのは、業種、相手の役職、すでに付き合いがあるか、その会社がいま優先していそうなことです。その結果をもとに、いちばん合う営業担当に振り分けます。営業担当は商談ごとに、会社の概要や、抱えていそうな課題をまとめた資料を受け取る、とページは書いています。

Clay ↗

出典に基づく事実

一方で、このページには、発注の権限や予算、社内の確認を確かめる仕組みについての記述はありません。ページに日付の表示はなく、Clay 自身が書いた事例紹介です。

Clay ↗

A&Aの考え方

A&A は、YC の記事とこの Clay のページを並べて、次のように読んでいます。AIの下調べが強いのは、業種や役職のように外から見える事柄です。弱いのは、誰が実際に支払を決めるか、今期その費用の枠があるか、導入の前にどの部署の確認が要るか、という取引先の内側の条件です。

A&Aの考え方

商談前の下調べは、AIに任せやすい仕事の1つです。ただ、調べた役職を、権限を確かめた結果として扱うと、未確認の欄が埋まったように見えてしまいます。役職は手がかりで、その人が判を押せる証拠ではありません。取引先のサイトにある組織図や、担当者の推測も、同じく未確認の欄に置きます。

確かめたいことごとに、AIの企業調査で分かることと、本人に聞くまで未確認のことを分けた一覧(A&Aによる整理)
確かめたいことAIの企業調査で分かること本人に聞くまで未確認のこと
誰が支払を決めるか相手の役職(手がかり)その人が判を押せるか
今期の費用その会社がいま優先していそうなこと今期その費用の枠があるか
導入の前の確認業種、すでに付き合いがあるかどの部署の確認が要るか

次の面談の前に、未確認の欄を質問に直す

A&Aの考え方

未確認の欄は、「予算は未確認」のような書き方ではなく、次の面談でそのまま聞ける質問の文で書きます。

A&Aの考え方

表は、1件の商談につき1枚です。

A&Aの考え方

行は、使う人、支払を決める人、導入を確認する人の3行です。

A&Aの考え方

列は、本人から聞けたこと、未確認のこと、次に聞く相手の3列です。

A&Aの考え方

書き方の決まりは2つです。1つめに、本人から直接聞いたことか、本人が書いたものから分かったことだけを「聞けたこと」に入れます。2つめに、未確認の欄は質問の形で書きます。

仮想例

ここからは架空の例です。法人向けに、競合の動きを毎月まとめて届けるレポートのサービスを考えます。AIが下書きを作り、自社の担当者が仕上げる形です。取引先の企画の担当者が試用を気に入り、追加のデモを頼んできました。

仮想例

使う人の行には、本人から聞けたこととして、月初の競合比較に使うこと、今は手作業で2日かかることを書きます。未確認の欄は「この成果物のまま、社内の定例資料に載せられますか」です。

仮想例

支払を決める人の行は、聞けたことの欄が空です。未確認の欄には「この費用を決めるのはどなたですか。年内に決めるなら、いつまでに何が要りますか」と書きます。

仮想例

導入を確認する人の行も、聞けたことの欄は空です。未確認の欄は「レポートで調べる競合の会社名をこちらに渡すことに、社内の確認は要りますか」です。次に聞く相手は、3行とも企画の担当者です。

仮想例

埋めてみると、聞けているのは使う人の行だけでした。残りの2行は、聞けたことの欄が空いたままです。この時点で追加のデモを作っても、満足している1人をもう一度満足させるだけです。

A&Aの考え方

空欄が質問の形になったので、次に用意するのは資料ではありません。この質問を、答えられる人に届ける段取りです。

共同面談・判断材料・確認待ちから次の一手を選ぶ

A&Aの考え方

表ができたら、次の一手は、共同面談、判断材料の作成、確認待ちの3つから1つを選びます。

A&Aの考え方

共同面談は、担当者に頼んで、支払を決める人や導入を確認する人に同席してもらう面談です。支払か導入の行が空いていて、担当者がその人に声をかけられる時に選びます。作るのは資料ではなく、担当者が社内で頼みやすい短い依頼文です。

A&Aの考え方

判断材料の作成は、表の「次に聞く相手」で会う相手が決まり、その人が見たい物が分かっている時に選びます。費用の内訳や、今の手作業との比較など、未確認の欄の質問に答える物だけを作ります。追加のデモが合うのは、使う人がまだ出来に納得していないと分かった時です。

A&Aの考え方

使う人が出来に納得するかを確かめるデモの作り方は、別の記事「AIサービスの商談デモに顧客の課題を持ち込む:比較できる評価セットの作り方」で扱っています。

A&Aの考え方

確認待ちは、取引先の社内で確認が進んでいて、こちらが何をしても前に進まない時に選びます。何も作らず、いつまでに何が分かるかだけを担当者と決めておきます。

仮想例

先ほどの架空の例では、空いていたのは支払と導入の行でした。この場合に選ぶのは共同面談です。担当者に渡す依頼文は、たとえば次のような短いものになります。

仮想例

「月初の競合比較を、2日から半日にできる見込みが出ました。費用を決める方と、情報の扱いを確認する方に、一度30分ご同席いただけますか。費用の内訳と、どの情報がどこへ渡るかだけを説明します。」

A&Aの考え方

共同面談は、担当者との合意が前提です。空欄を埋めたいからといって、担当者を飛ばして上の人に連絡すると、担当者の立場を悪くし、商談を失うことがあります。表が示すのは、誰に会う必要があるかです。誰に連絡してよいかではありません。

まとめ

A&Aの考え方

現場の担当者の満足と、支払・導入の判断は、表の別の行に書きます。

A&Aの考え方

AIの企業調査で分かる役職は、権限を確かめたことにならないので、未確認の欄に置きます。

A&Aの考え方

次の面談の前に、未確認の欄を、そのまま聞ける質問に直します。

A&Aの考え方

その質問の宛先を見て、共同面談・判断材料の作成・確認待ちから、次の一手を1つ選びます。

担当者の満足は、支払や導入が決まった証拠になりません。追加のデモを作る前に、3つの役ごとに聞けたことと未確認を分け、未確認の質問を誰に届けるかで、共同面談・判断材料の作成・確認待ちのどれにするかを決めてください。

よくある質問

担当者が「上には自分から話す」と言う時は、どうしますか。

同席は無理に頼まず、確認待ちを選びます。上の人への話は担当者に任せ、こちらは何も作らずに、いつまでに返事があるかだけをその場で決めておきます。

社長に直接売っている時も、この表は要りますか。

多くの場合は要りません。使う人と支払を決める人が同じで、金額もその人の裁量で決められる範囲なら、3行に分ける手間のほうが大きくなります。導入の確認だけが残るなら、その1行だけを書けば足ります。

空欄がいつまでも埋まらない時は、どう判断しますか。

埋まらないこと自体を、1つの答えとして扱います。担当者が、決める人の名前も時期も言えない状態が続くなら、その商談の優先度を下げます。空いた時間は、別の商談に回します。

出典・編集情報

記事の調査で確認した一次資料です。資料の公開・更新時期と、調査時の確認日を分けて記載しています。

  1. Growth AMA with YC Partner Gustaf Alströmer

    Y Combinator · 2018-10-29

    確認日 2026-10-24
  2. How Lovable uses Clay to scale one of the fastest-growing startups in history

    Clay · undated customer story page

    確認日 2026-10-24

編集方針

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