調査資料の結論が割れたとき:AIに平均させず根拠と条件を残す
調査資料の結論が割れたら、AIに賛否を平均させず、資料ごとの根拠と未解決の条件を出させます。
この記事の要点
- 資料を1本ずつ読ませる依頼で、提案書などの主張と根拠の箇所をAIに書き出させる
- 結論が割れた所は、対象・時期・書き手の立場の違いをAIに表にさせる
- 結論を変えうる未解決の条件はAIに挙げさせ、その条件を自社の数字で埋める
- 決める前に、AIが示した根拠を人が原文で確かめる

目次
AIには資料を1本ずつ読ませる

A&Aの考え方
資料を1本ずつ別の依頼で読ませると、資料ごとの主張と根拠の箇所が混ざらずに手元に残ります。ここで言う賛否の平均とは、資料ごとの違いを消して「用途によっては有効」のような一文にまとめた答えのことです。
仮想例
たとえば、問い合わせ対応にAIを入れるために、比較資料と業界調査と外注先の提案書を集めたとします。3本をまとめてAIに渡し「要約して」と頼むと、どれにも少しずつ当てはまる答えが返ってくることがあります。
A&Aの考え方
読みやすい答えでも、どの資料のどこを根拠にしたかが分からないので、決め手になりません。
出典に基づく事実
Anthropicは2024年12月に、AIに仕事をさせる仕組みの設計を解説した記事を出しています。題は「Building effective agents」です。考えることがいくつもある作業は、1つずつ別の依頼に分けた方が、AIの結果はよくなりやすいと書いています。
A&Aの考え方
この記事を書いているAutomate & Augment(A&A)は、この2つを資料の読み比べに使います。作業を別々の依頼に分けることと、該当箇所を正確に指す引用を作らせることです。依頼を資料1本ごとに分け、主張と、根拠のページや節と、前提の3つを書き出させます。
A&Aの考え方
前提には、誰を対象に、いつ、誰が書いた資料かを入れます。1本ずつにしておけば、結論が割れた時に、どの資料のどこが違うかまで戻れます。
結論が割れた所は、違いをAIに表にさせる

A&Aの考え方
3本分の書き出しがそろったら、別の依頼でAIに横に並べさせ、結論が一致する所と割れる所を分けさせます。割れた所には、対象・時期・書き手の立場のどれが違うのかを書かせます。
出典に基づく事実
Anthropicは2025年6月に、AIに調べものをさせる機能の作り方を公開しています。題は「How we built our multi-agent research system」です。その記事は、出来上がった答えを採点する観点を挙げています。
出典に基づく事実
人が試した時に見つかった偏りも書かれています。初期の仕組みは、検索の上位を狙って作られたサイトの方を選び続けていました。順位は低くても信頼できる論文や個人のブログより、そちらを選んでいたのです。出典の質の目安をプロンプトに足して直したとされています。

A&Aの考え方
一次資料とは、調べた本人や当事者が出した資料のことです。A&Aはこの話を、結論より先に、誰が何のために書いたかを見るべき理由だと考えています。売る側の比較資料は、自社の商品が勝つ前提で作られていることがあります。
A&Aの考え方
表に書き手の立場の列を置くと、割れた理由が中身の違いか、書き手の違いかを分けて見られます。
仮想例
仮の例として、社員6人の会社が、問い合わせ対応を既製のAIサービスで始めるか、外注先に自社用を作ってもらうかを3本の資料で決めるとします。資料も数字も架空です。3本を並べた表は、この節の最後に載せます。
A&Aの考え方
表を見ると、Aは問い合わせの多い会社を対象にし、Bは作る側の提案だと分かります。Cは中小企業300社を2024年に調べたもので、3本の中で一番古く、件数で分かれ目を置いています。どれかが誤りというより、前提が違うから結論が割れていると読めます。
| 資料 | 結論 | 対象/時期/書き手の立場 |
|---|---|---|
| A 比較資料 | 既製のサービスで十分 | 問い合わせが月500件以上の会社/2025年/既製サービスの販売元 |
| B 提案書 | 自社用に作るべき | この会社/2026年/作る側の外注先 |
| C 業界調査 | 月200件未満なら既製で足りる | 中小企業300社/2024年/業界団体 |
AIが挙げた未解決の条件を自社の数字で埋める

A&Aの考え方
表ができたら、もう1つ別の依頼で、どの条件が分かれば結論が決まるかを挙げさせます。その条件に答えるのはAIではなく、自社の数字を知っている経営者です。
出典に基づく事実
先ほどのAnthropicの2024年12月の記事は、もう1つの組み方も紹介しています。1つの依頼で答えを作らせ、別の依頼でその答えを評価させ、直す所を返させる組み方です。複雑な検索では、さらに調べる必要があるかを評価の側が決めるとしています。
A&Aの考え方
A&Aは、この評価させる依頼に、何がまだ分かっていないかを挙げさせます。AIが知っているのは、資料に書かれた範囲だけです。自社の問い合わせ件数や、誤った答えをどこまで許せるかは、どの資料にも書かれていません。
仮想例
依頼の文は、たとえば「この表の結論を変えうる条件のうち、どの資料にも答えが無いものを挙げて。条件ごとに、どの資料のどの行に効くかも書いて」とします。効く行が書いてあれば、埋めた後に表のどこへ戻ればよいかが分かります。
仮想例
先ほどの例なら、AIは3つの条件を挙げるかもしれません。月の問い合わせ件数、料金や納期の誤った答えを許すか、答えの元になる情報を誰が直すか、です。
仮想例
社長がそれぞれ「月80件」「料金の誤りは許さない」「直すのは自分」と埋めたとします。
仮想例
埋めた後で表に戻ると、Aの対象は自社に当てはまりません。Cの分かれ目の月200件未満には入るので、既製で足りる側になります。
仮想例
残るのは、料金の誤りを既製のサービスで防げるかという1点です。これは契約の前に販売元へ聞けば確かめられます。3つ目の「直すのは自分」は、どちらを選んでも社長の手間として残るので、分かれ目にはなりません。
決める前に、AIが示した根拠を人が原文で確かめる

A&Aの考え方
表と埋めた条件で答えが見えても、決める前に、結論を左右する行だけはAIが示した箇所を原文で開いて確かめます。全部を読み直す必要はありません。
出典に基づく事実
Quillitの担当者は、引用の正確さを数字で示しています。Claude 3.5 Sonnetを使う前は60〜70%ほど、使い始めてからは89〜98%だったと話しています。この正確さは、顧客が分析結果を信頼するために欠かせないとも述べています。
A&Aの考え方
これはQuillit自身の報告で、聞き取りの書き起こしを分析した時の数字です。上がった後でも100%ではない点は、資料の読み比べにも当てはまるとA&Aは考えます。AIが示した箇所が主張と合わないことはあり得ます。
A&Aの考え方
経営者は、結論の分かれ目になった行と、条件を埋めた時に決め手になった行だけを確かめれば足ります。先ほどの例なら、Aの「月500件以上」とCの「月200件未満」の2か所です。原文がそう書いていれば、その表で決められます。
A&Aの考え方
原文に該当の箇所が見つからない時や、数字が違う時は、その行を表から外します。残りの資料で、もう一度結論が割れていないかを見直します。
A&Aの考え方
確かめられるのは、資料がそう書いているかどうかまでです。資料の中身そのものが誤っている時は、原文を開いても誤りは消えません。
まとめ

A&Aの考え方
資料を1本ずつ読ませる依頼で、提案書などの主張と根拠の箇所をAIに書き出させます。
A&Aの考え方
結論が割れた所は、対象・時期・書き手の立場の違いをAIに表にさせます。
A&Aの考え方
結論を変えうる未解決の条件はAIに挙げさせ、その条件を自社の数字で埋めます。
A&Aの考え方
決める前に、結論を左右する行だけ、AIが示した根拠を人が原文で確かめます。
結論が割れた資料は、AIに平均させるより、資料ごとの根拠と前提を並べさせた方が決め手が残ります。読者が次に決めるのは、AIが挙げた未解決の条件に入れる自社の数字と、原文で確かめる行です。
よくある質問
ChatGPTやClaudeに「3本を比べて」と一度で頼むのでは足りませんか。
資料が少なく、判断が軽いなら足ります。重い判断で結論が割れている時は、1本ずつ書き出させた方が、どの資料のどこが違うかまで戻れます。
AIサービスの販売元や外注先が書いた資料は、外した方がよいですか。
外さずに、表の「書き手の立場」の列に書いておきます。売る側の資料にも、自社に当てはまる事実が含まれていることがあるからです。
原文を確かめる時間が取れません。
結論を左右する行だけを確かめます。結論の分かれ目になった行と、条件を埋めた時に決め手になった行です。3本の資料の仮の例では2か所で、全部を読み直すより短く済みます。
出典・編集情報
記事の調査で確認した一次資料です。資料の公開・更新時期と、調査時の確認日を分けて記載しています。
- Building effective agents
Anthropic · 2024-12-19
確認日 2026-10-24 - Quillit eliminates 80% of the time-consuming tasks of qualitative research using Claude
Anthropic · Publication date not stated
確認日 2026-10-24 - How we built our multi-agent research system
Anthropic · 2025-06-13
確認日 2026-10-24